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二つの御業と火の始末

僕はボールを扱う競技が苦手だ。コントロールに難があるのだ。

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僕は下の段である。奇跡的に逆転できた。これは僕の実力であるというよりは、一にも二にも運が良かったと言う他ない。常日頃の思想や行動が超自然的な力に認められたのだろう。この後のゲームでは相手に大差をつけられ敗北した。驕れるものはなんとやらである。

これは池袋ラウンドワンでの出来事だった。池袋に来た主な用事は、二日後に迫ったコンサートに向けてのスタジオ練習だった。当日予約で割安に二台ピアノスタジオを四人で二時間、借りるついでに遊んでご飯も食べようという試みだった。ボウリングの後メダルゲームで時間を潰し、スタジオに向かい、そこでもう二人が合流したというわけである。

スタジオでの練習、これが非常に有意義だった。何より録音機材が常備されており、セルフサービスで使用しても良いとのことだった。後に聞き返すと粗のわかること、次の練習に活かしたいと考えていたが、これを書いているのは当日、コンサート会場に向かう電車の中である。

この日記を書くのが遅れた主だった理由が、スタジオを後にした一行が向かった磯丸水産にある。家系ラーメンだったり、くら寿司だったり、串カツ、焼肉など多岐にわたっていた選択肢の中からここを選んだのは大変な運だった。僕はこの居酒屋チェーン店に足を踏み入れるのは初めてだった。

量の割に安い海鮮丼で小腹を満たした後、貝を肴にビールを飲んだ。貝の肴としての魅力に僕は完全に打ちのめされ、気が付くと三人に他人との在り方について無茶苦茶な持論を披露していた。面白おかしく聞いていると言ってくれてはいたものの、我ながら面倒くさい性分であることを感じずにはいられなかった。

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終電が迫る頃、店側で開催するじゃんけん大会なるイベントが始まった。全員参加のもので、優勝した人のテーブルの会計が半額になるというものなのだが、これに後輩が優勝した。周りの客からも拍手喝采を貰いながら、勝利の美酒のおこぼれを頂く形になった。気が付けば終電はとうになくなっていた。

磯丸水産で十二分に酔い、驚くほどの少額で心身共に満たした僕と一行はダーツをして朝を待つことにした。ここからが大変だった。先の居酒屋で飲みすぎたこともあり睡魔が絶え間なく寝るよう囁き、僕はこれに周りを気にせず小躍りしたり歌を歌ったり、床に座り込むなどして返した。ボールのコントロールが苦手僕がダーツのそれに優れている訳もなく、酔いと眠気も相まって点数は地獄の様相を呈していた。

朝の八時までのフリータイム投げ放題プランで始めたため無限に続くかと思われたこの流れは、翌日(子夜を超えていたので、実際には当日だが)にバイトを控えていた一行の一人が万力で締められるような頭痛を訴えたところで一旦の終わりを迎えた。

外の寒さに身を震わせながら一行は大学方面の電車に乗った。僕ともう一人はそのまま会室に向かい、練習して帰る算段だった。しかし大学も四六時中開いているわけではいので、始発近い時間で大学に向かうと時間が余るのは必定と言えた。そこで僕らは余った時間を電車の中で寝て過ごそうと考えた。

ここで失敗したのが寝る電車の路線である。京王線で寝ていれば暖かかったかもしれないが、就寝場所としてモノレールを選択した僕らはその電車内気温に絶望した。まるで暖房が効いておらず、狭い駅間隔で開くドアから入る冷気に、友人は途中まで寝付くことさえ許されなかったという。それほどに寒かった。

やっとの事で時間を潰した僕らは、大学が開くや否や、会室に向けて歩き出した。かなりの敷地面積を(無駄に)誇る大学では、会室の鍵を借りて室内に入るまでに相当の距離を歩かされる。既に体の芯、頭から足先まで凍えきっていた僕らは、自然と首に力が入り痛みを感じ、背が自然と丸まり類人猿さながらの歩きを見せながら目的地に向かった。後に調べるとその時の気温は零度より低いということだった。その時の僕らの有様は、さながら聖地イェルサレムに向かう宗教徒のそれだっただろう。

練習のために大学に来た二人がまず行ったのは食事と睡眠だった。僕は途中講義に向かったが、結局四時間近く寝たように思う。暖かいだけで、横になれるだけで人はこれ程幸せを感じられるものなのか、と感じる暇もないほどの熟睡だった。

午後になって多少の練習をした後、コンサート前の最後の英気を養うために向かった先がラーメン二郎である。向かう途中夕焼けを見たが、同じような朝焼けを見ていたので不思議な心地がした。

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半年以上口にしていなかったそれは変わらず味が濃く、肉の脂は絶妙、量は多すぎ、食べ終わり店を出る頃には胃はグロッキーといった状態になった。

極限まで自分を追い詰めたがる性分と、死なば諸共精神が災いした僕らは、ラーメン二郎を食べたその足で、言わずと知れたスターバックスコーヒーに向かった。

流石の小洒落た雰囲気と暖かさ、そして一杯のラテが眠気を誘う。意識を失いそうになりながらも二日間の総括をした僕らは、自前のPCで作業している連中に心の唾を吐いてスタバを後にし、駅まで歩いて解散となった。

コンサート前に激動の二日間、不思議と練習した記憶があまりないが、本番は常日頃の思想や、ここに記した行動が超自然的な力に認められることで上手くいくと信じている。